ディレクターにとっての「カウボーイの鞍」

はてなでプロデューサーを務めている id:kiyo-shit です。

「はてなディレクターアドベントカレンダー2016」の12月23日の記事です。12月22日には id:byorori点と点を繋げること - Do what thou wilt shall be the whole of the Law!を書きました。

はてなへ転職して1年が過ぎたところでありますが、まあ四十路もほどなく見えてくる年齢にもなると、転職ひとつとっても様々な体験をしてきているものです。

最悪の体験は、辞意を伝えたところ、本社登記されている危なっかしいワンルームマンションに連れて行かれ、8時間程「ここで辞めたらお前はビジネスパーソンとして終わる」みたいな意味の分からないことを説かれ続けるという軟禁事件。次点は、その数日後に同じワンルームマンションで8人くらいに囲まれ「辞めないで下さい」的なことを4時間以上言われ続けるという、やはり軟禁事件。やめよう、気軽な軟禁。

そういう最悪な体験も含めて今の自分があるという気持ちは一切無く、普通に最良な体験のみでやっていきたいものです。

さて、ジョブホッパーと言える程の転職はしていないものの、プロジェクトやタスクだけでなく、社内/社外に発生した問題への対応や顧客との齟齬の解決も、複数の環境に身をおいたことで体験のバリエーションは多くあると思っています。そういった体験を自分なりにしっかりと咀嚼したものが、三枝匡氏の言葉を借りれば、<<いつか見た景色>>として「フレームワーク」化されてきてもいます。

一方、インハウスのディレクター業というのは、組織構造や収益構造、企業風土、社内文化等に引きずられる要素も程々にあるため、その会社の物理的・文化的アセットありきでうまくいっていたやり方には、ポータビリティが無いようにも思います。では、ディレクターにとっての「カウボーイの鞍」はどういったものなのか。はてなにジョインして1年経ったところで感じている、転職後にも生き残り続けた「習慣」や「考え方」をご紹介しようと思います。何かの参考になれば幸いです。

失敗をしっかりと自己分析する

大小含め失敗は日頃からあるわけですが、すぐに「気を取り直していこう」と思わず、どこがマズかったのか、出来事を反芻しながらチェックするようにしています。

自分で自分に対して真正面からフィードバックをするのはそれなりに悶絶体験で、「うおー!俺は絶対悪くない!!!いや、やっぱり俺が悪い!!!」みたいに感情剥き出しに Evernote へ書き殴るようなことも良くあります。

反芻することで倍の経験ができるというのはお得とも言えますし、フレームワーク化するにも大切な作業だと思っています。

ネガティブな感情に突き動かされずにニュートラルであるべきという意見もありますが、私自身は無理にニュートラルに構えないようにしています。元々、成功者へのルサンチマンを動力源とすることが多いので、ネガティブな感情自体に肯定的なところがあります。

「パフォーマンスのニッチ」を見直す

パフォーマンスのニッチは『トレーダーの精神分析』で「能力や個性をフルに発揮できる得意分野」と説明されています。

ディレクターのパフォーマンスにおいては、ジェネラリストであることを求められることが多いように感じます。人間パラメータは MAX でありたいですが、まあそうもいかないのが現実ではあるので、自分にとって自信を持てる得意分野でしっかりとパフォーマンスを出したいと思っています。

ここで言う得意分野と言うのは、エンジニアキャリアがあるなら技術的知見や素養となるでしょうし、そうでなくてもコミュニケーションに長けていれば調整力になると思います。企画力、営業力、商品開発力等ももちろんニッチと言えるはずです。

ストレングスファインダーで言えば「着想」「原点思考」「回復志向」が私の性格面での強みとなるので、マネタイズに関するアイディアや難局のソフトランディングあたりがニッチと自覚しています。

こういったニッチを、プロジェクト単位、チーム単位、ポジション単位で良い感じにフィットさせたり、ニッチじゃないことを無理にやっていないか見直すこともしています。

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他所様の台所事情を伺う

常にベンチマークとなる企業や媒体の動向はウォッチすべきで、上場企業であれば TDNet で決算短信や決算説明会資料を読んで考察するようにしています。

何を課題と思っていて、それに対してどのような打ち手を考えているのか、であったり、「ヘルスケア領域に行く」「旅行領域に行く」等、市場性があると判断し投資を進める計画が載っている、大変貴重な情報源です。

単純にアイディアのストックにもなりますし、上手く行ってないように読める情報があれば「自分たちだったら上手くやれるのか」といった事業的な観点での練習素材にもなります。

「手なりで進めてアガリを目指す」ことを避ける

経験を積んだことによる諸刃の剣感が一番出るのが、パターン認識で作業を進めてしまえることだと思っています。効率の良さに意識が向いて、工夫するコストを惜しんでしまうのは気をつけていきたい。

手なりで進めても良くて満貫手くらいで、更に汗をしっかりかくことで跳満まで目指せるケースは多そうです。特にスケジュールワークにおいては進捗管理で精神安定を図ることにフォーカスしがちなので、工夫のための心の余裕も保てるようにありたい。

オペレーションは(出来る限り)しない

ディレクターの本分はネチネチとオペレーションすることではなく、向かうべきところへメンバーを誘導することだと思っています。

とはいえ強く介入した方が良いこともあるし、介入が遅れたことを反省することもあります。

構えたところにボールを投げてもらうようなタスクの振り出しは、オペレーティブなコミュニケーションをしてるんじゃないかと不安に思うことも良くある。メンバーの個性を尊重したコミュニケーションで気持ち良く仕事して、そして成長してもらえるようなディレクションを心がけていきたい。

最後に

見返してみると、直接的にディレクター業と関係無いものもありますが、自分なりの<<いつか見た景色>>はより一層積み上げていきたいと思っています。そして、皆さんが持っている<<いつか見た景色>>を活用してくださる方を募集しています!

hatenacorp.jp

明日の担当は id:tnishikawa です。